氷屋の氷、純氷とは
氷屋さんの氷、純氷とは、水道水、または地下水等をろ過殺菌し、48時間から72時間をかけて凍らせた、ほんものの氷のことです。冷蔵庫や製氷機の氷、シリコン製などの樹脂製氷皿とは違い、-10℃前後でゆっくりと凍らせて作っているので、
天然氷のように、結晶の大きさが大きいため、とけにくく透明で硬い氷です。
業務用氷の製造方法
業務用氷の製法には、主に「アイス缶製造方式」「ターボ製氷方式」「セル製氷方式」の3種類があります。市販されている業務用氷は手作りの「アイス缶製造方式」、自動化された「ターボ製氷方式」で製造され、 加工、計量、袋詰め、梱包され販売されています。
「セル製氷方式」は小型化、自動化され、製氷業の許認可の取得も必要でないため、多くのレストラン、飲食店等で利用されています。
アイス缶製造方式
氷屋さんの氷、純氷はこの製法で製造されます。最も高品位な氷が製造できる半面、1缶の氷(およそ135kg)を製造するのに48時間から72時間をかかること。
氷の透明性、品質を保つため24時間に1度は、不純物が集まった中心部の未凍結な水を吸い取り、洗浄して原水を交換しなければならないこと。
(この作用を逆手に取ったのが溶液の濃縮法、インスタントコーヒー、インスタント味噌汁などのフリーズドライ製法です。
氷は不純物を押し出し、排除しながら成長する性質があります。
エキスが詰まった溶液をゆっくり攪拌しながら凍結していくと、冷却板に接した水は透明な氷になり結果、溶液は濃縮されていきます。
冬の朝けっして透明とは言えない水溜りの表面に透明な氷が張っているのもこのためです。)
これらの作業は原水の温度、製氷温度、冷媒液の循環速度、製氷缶の製氷槽での位置等、様々な要因で1缶ごとに氷の凍結速度が異なるため、
自動化することが非常に困難であり熟練工の手でなければ高品位な氷、純氷は出来ないことから、他の製法に比べコストがかかります。
各製氷メーカーも凍結温度を下げる、各缶ごとではなく一定時間で水の交換をするなど、
製造時間の短縮、人件費の削減等による効率化を図っていますが、その分、氷の品質はどうしても落ちます。
また、飲食用ではなく冷却用の氷として、水の交換をせず中心部が白濁した氷、
原水そのままを攪拌浄化せず凍結させた(冷蔵庫の製氷皿の氷がこれに当たります。)不透明な氷を、水産氷(白氷)として販売している製氷会社もあります。
ターボ製氷方式
一般にはツララ製氷方式と呼んだ方が理解しやすい製氷方式です。ターボ製氷方式と呼ばれているのは、米国ターボ社が開発したことからで、アイス缶製造方式と異なり容易に自動化できることから、広く世界に普及しており、
袋詰め砕氷の多くがこの製法を取っています。
株式会社ニチレイ・アイスのサイトで「ターボ製氷方式」「アイス缶製造方式」を 詳しく図解してくれているので参考にしてください。
セル製氷方式
セル製氷方式の説明図
ターボ製氷方式、セル製氷方式の長所、短所
ターボ製氷方式、セル製氷方式の長所
ターボ製氷方式、セル製氷方式共に自動化されているので、24時間、年中無休で製造が可能であり、人件費が大幅に抑えられることです。ただし、ターボ製氷方式では出来てくる氷は不揃いの板状の氷であるため、砕氷機で粒状に砕き、選別機で粒を揃える必要があります。
この点、セル製氷方式ではキューブ状の氷が常時出来てくるため、砕氷、選別の工程がなく人件費をもっとも抑えられる製法と考えられます。
ターボ製氷方式、セル製氷方式の短所
効率を優先し、-15℃から-25℃で製氷しているため、結氷速度が速く、氷の結晶が小さいため、とけやすい。特にセル製氷方式では5面の冷却板で囲まれているため、凍結が早い分だけ氷の結晶は小さくとけやすく、
冷水を噴射しながら凍結させるため、噴射によるヘソのような穴が残り、完全なキューブ状にはならない。
その上付属した貯氷スペースは氷点下でないため、氷は出来た瞬間からとけ始め更にとけやすくなる。
とけやすくなるとは、せっかくの美味しい清涼飲料水、ウィスキーなどを水っぽく薄め、味を損ねる事に繋がります。
また、ターボ製氷方式、セル製氷方式とも出来た氷自体は透明ですが、冷却板から氷を剥離させるとき冷却板を熱し、接触面の氷をとかす必要があるため、
この時の熱せられた冷却板と氷との温度差により画像のように氷内部に多数の亀裂が入り、透明性を損ねる。
セル製氷方式の見逃せない欠点 1
セル製氷方式の自動製氷機は上部に製氷装置、下部に製氷能力に応じた貯氷庫がありますが、貯氷庫の氷は製氷機の冷気で冷やされているだけで、氷は出来た瞬間からとけ始めます。
多くの飲食店はSDGs(エスディージーズ)の取り組みに反し、自動製氷機で無駄に氷を作り、とかせています。
飲食店は自動製氷機を選ぶにあたって、氷を切らすことは出来ないため、
店舗の席数、客数等を予想し、かなりゆとりのある製氷能力の機種を選びがちです。
各自動製氷機メーカーはラニングコストがいかに優れているか機種ごとにうたっていますが、
このデータはあくまで製造コストであり、店舗ごとの氷消費コストではありません。
ピーク時を考え日産100kgの自動製氷機を購入した店舗が実際は60kgしか消費しなければ、
1日に40kgの氷を無駄にとかせていることになります。
自動製氷機は日曜祝日関係なく、消費量が0である休日でも24時間製氷し続けています。
正確には貯氷庫に一定量の氷が溜まったら製氷機は自動で生産を停止しますが、目減りすれば生産は再開されます。
自動製氷機をご購入の際は、使用量に合わせた機種を選び、繁忙期用の氷を冷凍庫で保管した方がコストは抑えられます。
セル製氷方式の見逃せない欠点 2
セル製氷方式の自動製氷機は一度店舗に据え付けられたら、定期的に清掃する店舗はまれでそのまま使い続けられます。製氷機の内部には冷凍機とそれを冷却する空冷ファンが搭載されています。
エアコンには室内機と室外機があり、冷却機(室外機)は室外に設置されていますが、
製氷機は一体化されているため、店舗内の目に見えない埃や油分を含んだ空気を吸引し冷凍機を冷却しています。
これがカビ発生の要因になっていると考えられます。
飲食店で提供される氷が入った水で、変な味がする、臭いがする、透明性に欠けるなどの異常を感じたら 氷がカビに汚染しているかもしれません。
要注意 製氷機からの異物混入